ラオスのe-Government × AI — 企業が公共サービスを活用するガイド

リード
ラオスのe-Governmentとは、政府機関がオンラインポータルやデジタルシステムを通じて行政サービスを提供する仕組みのことだ。
ラオスへの進出企業や現地法人の担当者にとって、会社登記・税務申告・貿易手続きのオンライン化は、コスト削減と業務スピード向上に直結する重要テーマとなっている。一方で、ポータルの分散やラオ語インターフェースの壁など、現場での課題も依然として残る。
本記事では、国家DX戦略2021-2030の概要から主要オンラインサービスの活用法、さらにAI-OCRやチャットボットを組み合わせた社内ワークフローの最適化まで、実務で使えるステップを体系的に解説する。行政手続きの自動化を検討している企業担当者は、ぜひ最後まで読み進めてほしい。
ラオスの e-Government とは、政府機関が提供する行政手続きをデジタル化し、企業や市民がオンラインで完結できる仕組みを指す。2021年に策定された国家DX戦略を軸に、複数の省庁ポータルが整備されつつある一方、窓口が分散しているのが現状だ。進出企業がこの仕組みを正しく把握しておくことは、手続きコストの削減と法令遵守の両面で重要な意味を持つ。次のセクションでは、ポータルの分散性と2030年に向けたロードマップを詳しく確認する。
行政デジタル化の定義とGov-Xなど現状ポータルの分散性
行政デジタル化(e-Government)とは、行政手続きをオンラインで完結させることで、企業や市民の時間・コストを削減する取り組みだ。ラオスでは政府主導のデジタル化が進んでいるものの、現時点では複数のポータルが並立しており、利用者が窓口を把握しにくい状況が続いている。
主要ポータルと担当領域の分散
現状、企業が接触する主なプラットフォームは以下のように分かれている。
- ラオスでは、企業が接触する主なプラットフォームとして NED(企業登録)、TaxRIS(税務)、LNSW/NSWA+(通関・貿易)などが整備されている。政府横断の統合ポータルは、公式に確認できる範囲ではまだ限定的で、手続きごとに所管ポータルが分かれている。
- MOIC(商業省): 企業登録・ライセンス関連の申請窓口
- TaxRIS: 国税局が管轄する税務申告・納付システム
- ASYCUDA+: 税関申告・貿易統計の電子化プラットフォーム
- 社会保険や労務関連の手続きは、所管機関の公式案内に従ってオンライン・窓口の併用で進める。名称や提供形態は更新される可能性があるため、最新の公式案内で確認する。
分散が生む実務上の課題
各ポータルはアカウント体系が統一されておらず、手続きごとに別ログインが必要なケースがある。また、ラオ語インターフェースが主体のシステムも多く、外資系企業の担当者にとってはナビゲーション自体がハードルになりやすい。
ただし、Digital ID や相互運用性の整備は進められており、将来的に行政サービスの認証連携が強化される可能性がある。現時点では、どのポータルで何ができるかを個別に確認しながら手続きに臨むのが実務上の前提となる。
国家DX戦略2021-2030と2026年までの到達点
ラオス政府は『National Digital Economy Development Vision 2021-2040』『National Digital Economy Development Strategy 2021-2030』『National Digital Economy Development Plan 2021-2025』を軸に、行政・経済・社会のデジタル化を進めている。戦略は前半(〜2025年)と後半(〜2030年)に分かれ、前半では基盤整備に集中している。
2026年までの主な到達目標
- 電子政府ポータルの統合:分散するGov-Xなど複数ポータルを段階的に一元化し、企業・市民が単一ログインで手続きを完結できる環境を目指す
- デジタルIDの整備:デジタルIDや電子認証の整備は進んでいるが、具体的な運用開始時期や制度名は公式発表を確認して判断する必要がある。電子署名の法的枠組みとしては、電子署名法とその運用決定が存在する。
- オンライン手続き率の向上:優先度の高い行政サービス(登記・税務・貿易)のオンライン化率を大幅に引き上げる目標が掲げられている
- 省庁横断データ連携:省庁間のデータ連携は、e-Government Interoperability Framework や関連するデジタル基盤整備を通じて進められている。
企業が注目すべき背景
現時点では戦略目標と実装の間にギャップが残るケースもあり、進捗は省庁ごとに差がある傾向がある。ただし、2023年以降は税関システム(ASYCUDA+)や社会保険アプリ(LSSO)の機能拡充が相次いでおり、政策の実行速度は上がりつつある。
進出企業は戦略ロードマップを定期的に確認し、新サービスの稼働タイミングに合わせて社内ワークフローを更新する準備を進めておくことが望ましい。
なぜ企業にとってe-Government活用が重要なのか?

ラオスへの進出・展開を検討する企業にとって、行政手続きの効率性は事業コストに直結する。窓口対応の待機時間や書類の往復が減れば、その分だけ本業へのリソースを集中できる。
2025〜2026年にかけて、ラオス政府はLDIF・LSSO・E-Trustといった新施策を相次いで展開しており、手続き環境は急速に変化しつつある。これらの変化を把握しているかどうかが、競合他社との差を生む可能性がある。
次のH3では、具体的な新施策の内容と手続き時間への影響、さらにASEAN各国との比較を通じてラオスの現在地を確認する。
2025-2026年の新施策(LDIF/LSSO/E-Trust)と手続き時間への影響
ラオスでは LSSO などの既存デジタル施策が運用されており、Digital ID や電子認証基盤の整備も検討・紹介されている。もっとも、制度ごとに公開状況は異なるため、個別に公式確認する必要がある。 それぞれの概要と実務上の意味を押さえておきたい。
主要三施策の概要
- ラオスでは市民データと ID 基盤の統合が進められているが、具体的な略称や制度名は公式発表に従って確認する必要がある。企業実務では、本人確認や電子署名の要件が公表された時点で対応するのが安全だ。
- 社会保険関連のデジタル化は進展余地があるが、利用できるサービス名と機能は所管機関の公式案内で確認する必要がある。現時点では、オンラインと窓口対応の併用を前提に運用するのが現実的だ。
- 電子署名と認証の制度は既に存在し、税務・通関などの一部手続きで活用が進んでいる。導入時期や対象範囲は、各省庁の最新通達を確認して判断する。
手続き時間への実際の影響
現時点では各施策の完全稼働前であるため、削減効果の数値は公式に発表されていない。ただし、近隣ASEAN諸国でデジタルIDと電子認証を組み合わせた事例では、申請から受理までのリードタイムが短縮された傾向が報告されている。ラオスでも同様の効果が期待できるが、実際の削減幅は自社で検証することが望ましい。
企業が今すべき準備
- LDIFの法人登録要件を公式発表と同時に確認する
- 社会保険担当者にLSSOアプリのアカウント開設を促す
- E-Trust対応の電子署名ソリューションの候補を事前にリストアップする
施策はまだ移行期にあり、物理手続きとの併用が続く局面も想定される。最新情報は各省庁の公式ページで随時確認することを推奨する。
UN EGDI 2024で見るラオスの位置とASEAN比較
国連電子政府開発指数(UN EGDI 2024)は、オンラインサービス・通信インフラ・人的資本の3指標を合算し、世界193か国をランク付けする。ラオスの順位は中位グループに位置し、ASEAN先進国との差は依然として大きい傾向がある。
ASEAN主要国との比較イメージ(EGDI 2024)
| 国 | EGDIスコア帯 | 特徴 |
|---|---|---|
| シンガポール | 非常に高い | デジタルID・API連携が成熟 |
| マレーシア | 高い | 電子調達・税務が統合済み |
| タイ | 中〜高い | 税務・企業登記のオンライン化が進展 |
| ベトナム | 中程度 | 急速に改善中 |
| ラオス | 中〜低い | インフラ整備と人材育成が課題 |
| カンボジア | 低〜中程度 | モバイル活用で一部補完 |
※スコアの詳細数値は公式レポートを参照のこと。
この差が企業に与える実務的な影響は以下の3点に集約される。
- 手続きの二重管理: オンライン申請が整備されていない分野では、物理書類の準備が並行して必要になる
- 情報の非対称性: 制度改正情報がデジタルで即時公開されないため、現地パートナーへの依存度が高まりやすい
- 言語バリア: 英語対応ポータルが限定的で、ラオ語UIのみのシステムが多い
ただし、ラオス政府は2021-2030 DX戦略のもとで改善を進めており、EGDIスコアも緩やかな上昇傾向が報告されている。企業としては「現状のギャップ」を把握した上で、次セクションで紹介するオンラインサービスを選択的に活用することが現実的な対応策となる。
企業が活用できる主要なオンライン公共サービス

ラオスでビジネスを運営する企業にとって、どの手続きがオンラインで完結できるかを把握することは、コスト削減と業務効率化の出発点となる。政府は会社登記・税務・貿易・労務の各領域でポータルの整備を進めており、活用できるサービスの幅は年々広がっている。以下の各セクションでは、企業実務に直結する主要なオンラインサービスを領域別に整理し、具体的な活用ポイントを解説する。
会社登記・企業公告(MOIC / DERM / NED / E-Trust 2026)
ラオスでの会社設立・変更登記は、MOIC 配下の企業登録関連機関と NED の手続きを通じて行う。手続きの詳細や必要書類は、最新の公式登録フローで確認する必要がある。近年、オンライン申請の整備が進んでいるものの、実態はポータルの機能と書類の物理提出が混在する段階にある。
現状のオンライン化ポイント
- NED(National Enterprise Database): 企業情報の検索・公告をオンラインで確認可能。取引先の登録状況確認に活用できる
- DERM ポータル: 新規設立の事前申請フォーム入力・書類チェックリストの取得をオンラインで実施できる傾向がある
- 電子署名やデジタルIDの整備が進めば、将来的に登記手続きのオンライン比率が高まる可能性がある。現時点では、会社登記は最新の登録フローに従ってオンラインと窓口を組み合わせて対応するのが前提である。
企業が押さえるべき実務上の注意点
- 現時点では、定款・株主名簿などの原本提出が求められるケースが報告されている
- 外資企業は投資促進局(DICA 相当)との並行手続きが必要な場合がある
- NED は企業情報の確認や企業登録の手続きに利用されるが、公告や登記情報の公開範囲は手続きごとに確認する必要がある。変更登記後は、登録情報の反映状況を公式サイトで確認するのが望ましい。
Digital ID や電子署名の制度整備が進む可能性を見込み、社内の電子署名環境は将来の制度変更に対応できる構成で検討しておくのが現実的である。次セクションで扱う税務・税関手続きとも連携するため、登記情報の正確な維持管理が全体の効率化につながる。
税務・税関・貿易(TaxRIS / NSWA+ / ASYCUDA+)
ラオスの税務・税関・貿易手続きは、複数のデジタルプラットフォームが段階的に整備されており、企業の事務負担を大幅に軽減できる可能性がある。各システムの役割を正確に把握しておくことが実務上の出発点となる。
**TaxRIS(Tax Revenue Information System)**は、ラオス税務局が運用する税務申告・納付ポータルだ。法人税・付加価値税(VAT)の電子申告や税務登録番号の管理に対応しており、首都ビエンチャンを中心に導入が進んでいる。ただし地方税務署では窓口対応が併用されているケースが報告されているため、拠点所在地ごとに対応状況を確認することが望ましい。
NSWA+ / LNSW は許認可や申請の電子窓口として使われ、詳細な通関申告は ASYCUDA で処理される。両者は連携しているが、機能は完全統合ではない。輸出入の許認可や通関申告は、所管機関ごとの運用に従って行う。
**ASYCUDA+(Automated System for Customs Data)**は、ラオス税関が採用するUNCTAD標準の通関システムだ。輸出入申告の電子化・リスク管理・統計集計を担い、以下の実務メリットが挙げられる。
- 輸出入申告書のオンライン提出で税関窓口での待機時間を短縮
- 過去の申告データを参照できるため、繰り返し取引の書類作成が効率化
- 電子的なステータス照会により、貨物の通関進捗をリアルタイムで把握可能
これら3システムは相互に連携が進んでいるものの、完全統合には至っていない部分もある。最新の接続状況は各省庁の公式ドキュメントで確認することを推奨する。
労務・社会保険・入出国(LSSOアプリ / MOLSW / LDIF / eビザ)
労務・社会保険・入出国の分野は、近年のデジタル化が最も進んでいる領域のひとつだ。外国企業の人事担当者にとって、これらのシステムを把握しておくことは実務上の必須事項となっている。
LSSo(ラオス社会保障機構)アプリは、企業の社会保険料申告・納付をスマートフォンから行えるサービスだ。従来は窓口への持参が必要だった月次申告が、アプリ上で完結できる傾向にある。主な機能は以下のとおり。
- 被保険者の登録・変更・脱退手続き
- 月次保険料の計算・オンライン納付
- 申告履歴の照会
MOLSW(労働社会福祉省)のオンラインポータルでは、労働許可証(ワークパーミット)の申請状況確認や書類提出の一部がデジタル化されている。ただし初回申請には物理書類の提出が依然として求められるケースが報告されており、次のセクションで詳述する「ハイブリッド運用」が現実的な選択肢となる。
Digital ID などの本人確認基盤の整備が進められている。企業側の具体的な利用範囲は、制度公表後に確認する必要がある。2026年10月に向けたデジタルID本格展開に伴い、労務関連手続きとの連携が強化される見込みだ。
eVisa は、対象となる入国目的とビザ区分に応じて利用できるオンライン申請手段であり、外国人従業員の招聘に使えるかどうかは最新の公式条件で確認する必要がある。主な対象は観光・ビジネス目的の短期滞在だが、企業担当者が事前に入国スケジュールを管理しやすくなっている点は評価できる。
これらのシステムは相互に独立しており、一元的なダッシュボードはまだ存在しない。各ポータルのアカウント管理を社内で整理しておくことが、運用効率化の第一歩となる。
まだオンライン化されていない領域と物理提出との併用戦略

ラオスの行政デジタル化は着実に進んでいるものの、すべての手続きがオンライン完結できるわけではない。会社登記や労働許可など、依然として原本書類の窓口提出が求められる業務が残っている。こうした領域を正確に把握し、オンラインと物理提出を組み合わせたハイブリッド運用を設計することが、実務上のリスク低減につながる。次のセクションでは、物理提出が残る主な業務と、現地代行を活用した効率的な対応策を具体的に解説する。
物理提出が残る業務(会社登記・労働許可)と現地代行のハイブリッド運用
デジタル化が進むラオスでも、依然として物理的な書類提出や窓口対応が必要な業務は少なくない。進出企業はこの現実を踏まえ、オンラインと対面を組み合わせたハイブリッド運用を設計する必要がある。
物理提出が残りやすい主な業務
- 会社登記(MOIC): 定款・株主リストなどの原本提出が求められるケースが報告されている。E-Trust対応の電子署名が普及する2026年以降も、過渡期には窓口確認が残る見込み
- 労働許可証(MOLSW): 外国人就労許可は、申請種別や所管窓口により必要書類や提出方法が異なるため、最新の公式案内に従って確認する必要がある。
- 投資ライセンス更新: EIC(経済特区)外の案件では、担当省庁との対面協議が事実上必要なケースがある
- 公証・認証書類: 本国発行の書類はラオス外務省での認証(アポスティーユ相当手続き)が物理窓口で処理される
ハイブリッド運用の実践ポイント
- 現地代行エージェントの活用: 窓口対応・書類搬送を専門業者に委託し、本社担当者の渡航コストを削減する
- 書類管理のデジタル化: 提出済み書類のスキャンデータをクラウドで一元管理し、更新期限をアラート設定する
- オンライン申請との分担: TaxRISや社会保険(LSSO)などオンライン化済みの業務は社内で完結させ、物理対応が必要な業務のみ外部リソースへ振り分ける
重要なのは、どの業務がオンライン完結でき、どの業務が物理対応を要するかを定期的に棚卸しすることだ。ラオス政府のデジタル化ロードマップは更新が続いており、昨年まで窓口対応だった手続きが翌年にはオンライン化されている傾向がある。最新情報は各省庁の公式ポータルで随時確認することを推奨する。
AIで公共サービスの活用を自動化するパターン

ラオスの行政手続きがオンライン化されたとしても、書類準備・翻訳・申請状況の確認といった社内業務は依然として人手に頼りがちだ。そこで有効なのが、AI技術を組み合わせた社内ワークフローの自動化である。本セクションでは、AI-OCRによる書類デジタル化と、チャットボット・翻訳エージェントによる現場負荷の軽減という二つのアプローチを具体的に解説する。
AI-OCRで申請書類のデジタル化を行う(近隣国事例からの外挿)
ラオスではまだ多くの行政書類が紙ベースで発行・提出される。この非デジタル書類をシステムに取り込む際、AI-OCR(光学文字認識+AI補正) が有効な橋渡しになる。
近隣国での活用傾向
タイやベトナムでは、税務申告書・通関書類・労働許可証のスキャンデータをAI-OCRで構造化データに変換し、ERPへ自動入力する運用が広がっている傾向がある。ラオスに進出する企業でも、同様のアーキテクチャを応用するケースが報告されている。
ラオス特有の課題
- ラオ文字(ラーオ文字)は学習データが少なく、汎用OCRの認識精度が低い
- 書式が窓口・担当者によって微妙に異なり、レイアウト解析が難しい
- 手書き記入欄が残る書類(労働許可申請など)は誤認識リスクが高い
実践上の推奨アプローチ
- 対象書類の絞り込み: まずASYCUDA+やTaxRISから出力される定型フォームを優先。レイアウトが安定しているため精度が出やすい
- 人間によるレビュー工程の確保: AI-OCR後に担当者が差分確認する「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を必ず設ける
- ラオ語対応モデルの選定: 公式ドキュメントを確認し、ラオ文字に対応した多言語OCRエンジンを選ぶこと
AI-OCRはあくまで「紙とデジタルの変換層」に過ぎない。次のセクションで扱うチャットボットと組み合わせることで、書類取得から問い合わせ対応までの一連のフローを効率化できる。
チャットボット・ラオ語翻訳エージェントで現場の負荷を減らす
現地スタッフとのコミュニケーションや政府ポータルの操作案内において、言語の壁は依然として大きな障壁となっている。チャットボットとラオ語翻訳エージェントを組み合わせることで、この負荷を大幅に軽減できる可能性がある。
活用が期待できる主なシーン
- 社内ヘルプデスク: 「TaxRISへのログイン手順は?」「LSSoアプリで社会保険を申請するには?」といった繰り返し質問をチャットボットが自動応答し、担当者の対応工数を削減
- ラオ語↔日本語・英語の翻訳: 政府通達や官報の要点をリアルタイムで翻訳し、経営層への報告を迅速化
- 申請フォームの入力ガイド: ポータルの入力項目をステップ形式で案内し、記入ミスや差し戻しを減らす
導入時の留意点
ラオ語は低リソース言語に分類されるため、汎用の大規模言語モデルでは翻訳精度が不安定になるケースが報告されている。導入前に以下を確認したい。
- 法令・専門用語の翻訳精度を実務文書でテストする
- 誤訳リスクが高い税務・労働法関連は人間によるレビューを必ず挟む
- 個人情報や機密書類をモデルに入力する際は、利用規約とデータ保持ポリシーを確認する
チャットボットはあくまで「一次対応の効率化」ツールと位置づけ、最終判断は担当者が行う運用設計が現実的だ。小規模な社内FAQボットから始め、精度と信頼性を検証しながら段階的に適用範囲を広げるアプローチが、現場の混乱を最小化する上で有効とされている。
導入ステップとコンプライアンス・FAQ

オンライン手続きとAIツールを組み合わせる際には、ラオスの法制度への適合が不可欠だ。電子取引法(Law on Electronic Transactions No. 20/NA, 2012)は、電子文書や電子取引の法的枠組みを定めている。改正の有無や適用範囲は、最新の公式法令で確認する必要がある。電子商取引令やE-Trustといった規制枠組みは、企業の実務フローに直接影響する。電子署名や認証の制度は整備が進んでいるが、どの公的手続きで必須になるかは公式発表を確認して判断する必要がある。制度改定に備え、電子署名対応のシステム構成は柔軟にしておく。このセクションでは、導入前に確認すべき法的要件と、進出企業が現場でよく直面する疑問をQ&A形式で整理する。
電子取引法・電子商取引令・E-Trust・デジタルID(2026年10月予定)への対応
ラオスでAIや電子ワークフローを社内導入する際は、国内の法的枠組みを押さえておく必要がある。主要な規制と対応のポイントを整理する。
対応すべき主要な法規制
- 電子取引法(2012年制定・改正):電子商取引や電子文書に関する法的枠組みは存在するが、適用法令名と制定年は最新の公式法令で確認する必要がある。
- 電子商取引令:電子商取引関連の記録保存義務は、対象となる事業形態や取引類型によって異なるため、該当する法令と通知を個別に確認する必要がある。
- E-Trust(電子認証基盤):政府が整備を進める電子署名・認証サービス。2026年の本格稼働後は、一部の公的手続きでE-Trust経由の認証が必須となる見込みのため、事前に対応可能なシステム構成を確認しておくことが望ましい
- デジタルID(2026年10月予定):個人・法人向けのデジタル識別番号が導入される計画がある。公式ドキュメントの最新情報を定期的に確認すること
実務上の対応ステップ
- 電子文書の保存形式と保存期間を社内規定に明記する
- 電子署名ツールがラオス電子取引法の要件を満たすか、ベンダーに確認する
- E-TrustおよびデジタルIDの正式仕様が公表され次第、ITシステムへの組み込みを検討する
- 法改正の動向は、ラオス情報通信技術省(MICT)の公式サイトで定期確認する
現時点では制度移行期にあるため、**「現行ルールで動かしつつ、2026年の変更に備えた柔軟な設計を維持する」**姿勢が現実的だ。
FAQ(進出企業の実務Q&A)
ラオスへの進出企業から寄せられる実務上の疑問を、Q&A形式で整理する。
Q1. オンライン申請と紙申請、どちらが優先されますか?
現時点では窓口によって異なる。TaxRISやASYCUDA+は電子申請が主流だが、会社登記や労働許可は書面提出が残るケースが多い。各省庁の最新ガイドラインを事前に確認することを推奨する。
Q2. ラオ語ができない担当者でも手続きは進められますか?
- 多くのポータルはラオ語UIが基本
- 英語対応は一部に限られる
- 現地スタッフや認定代行業者との連携、またはAI翻訳ツールの補助活用が現実的な対策となる
Q3. E-Trustの電子署名は外資企業でも取得できますか?
2026年10月の本格運用に向けて整備が進んでいる。外資企業向けの取得要件は公式ドキュメントを随時確認すること。現時点では詳細仕様が変更される可能性がある。
Q4. AIツールで処理した書類は行政に受理されますか?
AI-OCRや自動翻訳はあくまで社内処理の効率化ツールとして位置づける。行政提出用の最終書類は、担当者が内容を確認・署名したうえで提出する運用が望ましい。
Q5. クラウド上のデータ保管に法的リスクはありますか?
クラウド上のデータ保管については、適用される個別法令と最新通達を確認し、必要に応じて法務専門家へ相談するのが安全である。
手続きの詳細は変更されることがあるため、MOICやMOFの公式サイトを定期的に参照する習慣をつけておきたい。
まとめ

ラオスのe-Government整備は、国家DX戦略2021-2030のもとで着実に進んでいる。企業にとっては、手続きの迅速化やコスト削減という直接的な恩恵が期待できる段階に入りつつある。
本記事で解説した要点を整理すると、次のとおりだ。
- 現状の把握: TaxRIS・NSWA+・ASYCUDAなどのポータルはすでに稼働中。ただしシステム間の連携は発展途上であり、分散した窓口への対応が当面の課題となる
- 2026年の変化点: 企業登記、税務、通関、電子署名のデジタル化は進んでいるが、制度の具体的な名称や適用範囲は公式発表を確認して判断する必要がある。現時点では、既存の公式ポータルを前提に業務設計するのが妥当だ。早期にアカウント登録や社内フローの整備を進めておく価値は高い
- 物理提出との併用: 完全オンライン化には至っていない領域も残る。現地代行サービスとのハイブリッド運用を前提に、業務フローを設計することが現実的だ
- AIとの組み合わせ: AI-OCRやラオ語対応チャットボットを活用することで、書類処理の工数削減や担当者の言語負荷を軽減できる。まず小規模な検証から始めることを推奨する
- コンプライアンス: 電子取引法・E-Trust・デジタルIDへの対応は、早めに法務・IT部門が連携して確認しておきたい
ラオスの行政デジタル化は「完成形」ではなく「進行中のプロセス」だ。制度・システムの変化を定期的にウォッチしながら、自社の手続きフローを柔軟にアップデートし続ける姿勢が、競合他社との差別化につながるだろう。
著者・監修者
Yusuke Ishihara
13歳でMSXに触れプログラミングを開始。武蔵大学卒業後、航空会社の基幹システム開発や日本初のWindowsサーバホスティング・VPS基盤構築など、大規模システム開発に従事。 2008年にサイトエンジン株式会社を共同創業。2010年にユニモン株式会社、2025年にエニソン株式会社を設立し、業務システム・自然言語処理・プラットフォーム開発をリード。 現在は生成AI・大規模言語モデル(LLM)を活用したプロダクト開発およびAI・DX推進を手がける。
Chi
ラオス国立大学で情報科学を専攻し、在学中は統計ソフトウェアの開発に従事。データ分析とプログラミングの基礎を実践的に培った。2021 年より Web・アプリケーション開発の道に進み、2023 年からはフロントエンドとバックエンドの両領域で本格的な開発経験を積む。当社では AI を活用した Web サービスの設計・開発を担当し、自然言語処理(NLP)、機械学習、生成 AI・大規模言語モデル(LLM)を業務システムに統合するプロジェクトに携わる。最新技術のキャッチアップに貪欲で、技術検証から本番実装までのスピード感を大切にしている。


